肛門周囲に膿が溜まる肛門周囲膿瘍
直腸粘膜と肛門の皮膚との境界線である歯状線の近くに肛門陰窩という小さな穴があり、穴の中には肛門腺と呼ばれる器官が存在します。その肛門線に細菌が感染して化膿した状態が、肛門周囲膿瘍です。膿瘍が深いところにできた場合は鈍い痛み、浅いところにできた場合には強い痛みを伴います。
免疫力が低下していたり、下痢や軟便が生じていたりすると、生じやすい疾患です。肛門周囲膿瘍では3~5割の患者様に痔ろうが残り、痔ろうの治療には手術が必要になります。このため、肛門周囲膿瘍のうちに治療することが重要です。
肛門周囲膿瘍の原因
歯状線よりも直腸側にある肛門陰窩に糞便が入るなどの理由で細菌感染が起こり、肛門線が化膿すると、肛門周囲膿瘍に進展します。健康な人であれば肛門陰窩に糞便が入っても感染は起こらず、免疫力が落ちているときに感染や化膿を生じやすいとされています。
なお、軟便や下痢はもともと肛門陰窩に入りやすく、肛門周囲膿瘍の原因になり得る要素の1つです。
肛門周囲膿瘍の症状
- 発熱
- 肛門から膿が出る
- 下着が膿で汚れる
- 排便とは無関係に肛門に痛みがある
膿瘍が深い位置にできると鈍い痛み、浅い位置にできると激しい痛みを伴います。肛門にさわると、痛みが強くなります。ときに38℃以上になる発熱も、症状の1つです。
肛門周囲膿瘍の検査と診断
直近の便の状態(軟便や下痢の有無や日数等)、症状の有無や内容を問診で伺い、触診と視診によって診断を下します。
必要に応じて、大腸カメラ検査を行う場合もあります。
肛門周囲膿瘍の治療と手術
切開排膿および内服薬
膿が溜まっている部分の皮膚を切開し、排膿します。
薬物療法では抗菌薬を基本として、必要に応じて痛み止めも処方します。
切開排膿後に再発する可能性は?
肛門線に細菌が感染すれば、再び化膿する可能性があります。肛門周囲膿瘍を予防するには、免疫力を高められるように生活習慣を改善したり、胃腸の調子を整えて便の状態を良くしたりすることが重要です。
切開して排膿しても膿が止まらず、痔ろうに進展する場合もあります。特に、深い位置にできた膿瘍は痔ろうに進展する確率が高いことが知られています。
手術
痔ろうに進展した場合、手術が必要です。
「シートン法」「瘻管切開開放術」「括約筋温存術(くり抜き法)」などの手術方法があり、痔ろうの深さや位置に応じて適切なものを選択します。
当院では、シートン法を採用しています。